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円安再生 成長回復への道筋
著者は経済学で新古典派総合と呼ばれる立場を取る。日本がデフレ不況から脱出するには、政府と日銀が為替市場に大規模介入を行い、円安・ドル高に誘導し、マイルドなインフレ醸成を行うことが必要というのが著者の主張で、その内容を詳しく解説する。著者はまず、「中国など新興国からの安価な商品の輸入」が日本のデフレの要因となっているという「輸入デフレ」説を否定し、総需要の低迷による需給ギャップの拡大がデフレの根本原因だと指摘する。貿易財価格の下落がデフレの要因になっている面は確かに見られるが、日本経済の体力に比べて、為替レートが円高で放置されていることから起きているもので、いわば「円高デフレ」だと表現する。
市場には、円安になったとしても一時的で、長期的には円高に回帰するという「長期円高予想」が存在する。日本は「資産デフレ、デフレ、低成長、超低金利」で特徴づけられる「流動性の罠」にはまっているが、これに長期円高予想が加わることで、さらに安定的な「悪い均衡」になってしまった。長期円高予想を完全に覆すほどの大規模な円安誘導策を行わなくては、悪い均衡から日本経済を救い出せないとして、著者が考える円安誘導策の具体策を紹介する。
(日経ビジネス 2003/06/02 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
-- 日経BP企画目次
第1章 デフレは経済に何をもたらすか
第2章 長期円高予想の罠
第3章 インフレとの戦いの結末
第4章 デフレと相対価格調整に関する誤解
第5章 過剰貯蓄をどうするか―財政政策の検証
第6章 インフレ・ターゲットは呪術経済学か
第7章 円安誘導政策の有効性
第8章 マイルドなインフレ醸成政策のためのさまざまな準備