夏目漱石の眼
「自分は画が解るやうでもある。又解らないやうでもある」と、はぐらかす漱石先生ですが、間違いないのは絵を見るのが大好きだったこと。画家が主人公の『草枕』にはラファエル前派のミレイ描く《オフィーリア》が登場するし、『坊っちやん』のターナー、『門』の酒井抱一、『それから』では青木繁と、この文豪は「眼の人」でもあったのです。今月の特集は漱石のお眼鏡にかなったそうした名画と、彼が生きた当時の東京の風景写真を、テキストの抜粋とともにご紹介。国民作家が見た美術と日常、二つの「景色」を浮かびあがらせます。漱石と変貌する東京については黒川創氏が、漱石の筆による書画については夏目房之介氏が寄稿。本人のディレクションも含む、見事な装幀の「漱石本」総覧もお楽しみに。
小特集では原田マハさんがロシアに飛び、新旧「現代美術」コレクター事情をルポ。長野まゆみさんにはデパートの老舗・髙島屋展を見ていただきました。