吉左衛門X INDONESIAN PRIMITIVE ARTS
インドネシアン・プリミティブアート 稲葉京セレクション
人物立像(Statue)/バハオ,ボルネオ(Bahau,Borneo)/木(Wood)
先述の佐川美術館・樂吉左衛門館(守山市)で催されている展覧会について... この「吉左衛門X」は、稲葉京と15代樂吉左衛門のコラボ展です。インドネシアン・プリミティブアートの世界的コレクターと云われる、稲葉京さんは、伊豆・河津温泉郷の玉峰館の3代目ご主人でしたが、今は旅館業をやめられてバリ島に在住、時々日本という生活だそうです。
はじめて稲葉京さんプロデュースの設えを拝見したときは風雨に晒され、朽ちたような「物」を配したその空間に震えました。
古い「物」のはずなのに新鮮で、レトロというには、あまりに斬新。当時、覚えた驚きは忘れません。ただ、「スゴイ」としか云いようのないセンスに瞬く間に惹かれ、本当に安住する空間とは、こういうものかもしれないと・・・ 以来、稲葉京さんのシンプルで研ぎ澄まされた感覚にはノックアウトされ続け、洗脳(笑)され続け、今に至っています。
今回、その稲葉京さんセレクションの展覧会があると伺い、なんとか時間を作って訪ねたいと思っていましたが、親友がその機会を作ってくれ、一昨日は京都から守山市へ... 水庭に浮かぶように佇んでいる佐川美術館はモダンですが、稲葉京さんの世界からは、少し遠いと感じながら入館しました。 ですが、夕刻に始まったお茶会を終えて、夜外に出ましたら、闇の中、水辺で行儀よく並んだ木々がライトに照らし出され、それは幻想的な光景で、お茶会の余韻を留めてくれる趣あるものでした。
稲葉京さんセレクションのインドネシアン・プリミティブ・アートは、「樂吉左衛門館」のエントランスホールの隅で、壁に十分な距離を保って、静かに並べられていました。
そのどれも開放的で、観る者すべてを受け入れるような実に包容力のあるもので、心のざわめきを鎮めてくれるようでした。ですが、厳かな風も湛えるという不思議な魅力を放ち、いい意味で圧倒させられる空間でした・・・そして、このプリミティブ・アートと同時に視野に入ったのがホールの床に置かれたガムランの楽器とお二人の奏者・・・ この神秘な空間に溶け込むような調べを奏でておられました。
さて、稲葉京さんと親交のある15代吉左衛門さんだそうですが、この展覧会のために、今春(2009)の窯で制作されたという、新作の茶碗が6点、茶入も6点が展示されていました。これらの作品はどれも、プリミティブアートをイメージし、プリミティブアートと向き合いながら作られたものだそうです。作品と一緒に、愛蔵のそれらのアートも展示されていました。インドネシアの石や木、金属などに刻まれた像など、それはひとであったり、動物であったり、愛蔵品は全部で9点。どれも自然に寄り添って生きた人々の手による素朴なものでした。
樂氏当代愛蔵品のなかで、特に惹かれたのは「木彫鹿像」でした。(写真がなくて残念!) 表情は見る角度によって異なり、まるで観る者の心情を表すよう... 立ち姿も、なんとも繊細で思わず支えの手を差しのべたくなりますが、こんな鹿さんが日常の空間に居てくれたら、と思わせる優しさです。
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吉左衛門X
INDONESIAN PRIMITIVE ARTS
インドネシアン・プリミティブアート
稲葉京セレクション
2009/9/19(土)~2010/3/14(日)
佐川美術館 樂吉左衛門館(地下)
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