戦前から戦後にかけて、多くの日本人が移民や植民として海外に渡り、日本の近代化を陰で支えてきた。本書は、日本における海外移住・植民の歴史を地域別に概観するとともに、今の日本に在住しているオールドカマーやニューカマーの諸課題にもふれ、日本と海外とのつながりを移民研究という切り口から読み解く。
目次
まえがき[高木(北山)眞理子]
序章 「移民」を研究すること、学ぶこと[森本豊富・森茂岳雄]
1 はじめに
2 「移民」の定義
3 近現代の「移民」に関する論点
4 移民研究の活用
5 移民について学ぶことの意義
6 おわりに第1章 近代日本の出移民史[木村健二]
1 はじめに
2 出移民の属性と背景
3 出移民の諸契機
政策
情報とネットワーク
斡旋業者
4 郷里とのつながり
送金・持帰り金とその役割
郷土人会
戦前期「外地」からの
手紙
5 おわりに
次へのステップ
コラム1:移民関係の外務省文書[柳下宙子]
第2章 ハワイ日系人の社会史――日本人移民が残したもの[白水繁彦]
1 はじめに
2 温暖で変化に富んだ地形
3 ホスト社会ハワイの歴史――ポリネシアンの島から多民族社会へ
4 ハワイ側の事情と移民側の事情――プル要因、プッシュ要因
5 日本からの移民 その変遷
第1期:出稼ぎ期 前期(1868~84年)
第2期:出稼ぎ期 後期(1885~1907年)
官約移民期
私約移民期
自由移民期
西日本に偏る移民の出身地
第3期:呼び寄せ・定住期(1908~23年)
エスニック・エージェンシーの発達
第4期:永住期:初期(1924~40年)
第5期:永住期:二世台頭期(1941~45年)
第6期:世代交代期 二世最盛期(1946~70年代)
第7期:世代交代期 三世最盛期(1970年代~2000年頃)
6 おわりに
次へのステップ
コラム2:エスニック・エージェンシーの例「日本語学校の機能」[白水繁彦]
コラム3:グアムへの日本人移民[中山京子]第3章 アメリカ合衆国への移民[坂口満宏]
1 はじめに
2 漂流民から強制収容まで
アメリカ合衆国に渡った日本人移民の歴史・概観(1868~1941年)
漂流民と留学生
海外への出稼ぎの始ま
日米紳士協約と移民社会の形成
1924年の移民法と在米日本人意識の形成
日米開戦と日系人の強制収容
アメリカ合衆国に渡った日本人移民数の推移
渡米目的の変化と渡米者数の推移
在米日本人数の推移
3 在米日本人の地理的特徴
アメリカの州別日本人移民数とその出身地
州別日系アメリカ人の人口と居住地
「オレゴンといえば岡山県人」
アメリカに渡った日本人移民の出身地を掘り下げる――岡山県を事例に
移民の出身地を図示してみる
4 日本とのつながり
アメリカ太平洋岸各地にできた県人会
呼寄せ時代の県人会
呼寄せ時代の終焉と県人会
県人会から海外協会の支部へ
海外協会の設立と海外支部
熊本海外協会のアメリカ支部
移民による郷里への貢献
5 おわりに
次へのステップ
コラム4:「北米日本人移民とキリスト教」に関する3つのアプローチ[吉田亮]第4章 カナダへの移民[河原典史]
1 はじめに
2 日本人社会の形成
3 出身地と職業
4 漁業と日本人
サケ缶詰産業と日本人移民
クジラと日本人移民
太平洋をめぐるニシン
新しい日本人漁村の形成
5 契約移民とその転業
6 日本文化の変容
庭園業と造園業
バンクーバー朝日軍
7 戦中・戦後の日本人
8 おわりに
次へのステップ
コラム5:密航船・水安丸[河原典史]
コラム6:ロジャーズ峠の雪崩災害[河原典史]
コラム7:新渡戸庭園[河原典史]第5章 ブラジルの移民政策と日本移民[三田千代子]
1 はじめに
2 ヨーロッパ移民の代替としての日本移民
ブラジルにおける外国移民導入の開始
サンパウロのコーヒー産業とヨーロッパ移民
イタリア移民に代わる日本移民、米国に代わるブラジル
3 ブラジルの国造りの理念と日本移民
「脱アフリカ化(デザフリカニザソン)」としてのヨーロッパ移民
サンパウロ州政府による
日本移民の導入
外国移民の選別
4 ヴァルガスの国民国家形成と日本移民
国策としての日本移民の送出
ブラジルの日本人共同体
寡頭(オリガーキー)政治の終焉と移民同化政策
5 祖国の敗戦と日本移民
戦時下の日本移民
6 戦後の日本人社会の騒乱
日系社会の統合
7 永住の決心と都市移動
戦後の日本移民の再開
国家主義の終焉と多文化主義
8 おわりに――100年という時間とその後
次へのステップ
コラム8:日本人会と日本語学校[三田千代子]
コラム9:二世の進学と社会上昇[三田千代子]第6章 中南米への移民[石川友紀]
1 はじめに
2 中南米への日本人移民の概説
中南米への日本人移民
世界における日本人移民の分布
1940年の世界における日本人移民の分布
3 中米メキシコへの日本人移民の事例
1897年榎本殖民とその後の契約移民
メキシコ革命と日本人移民の定住
4 南米ペルーへの日本人移民の事例
1899年サクラ丸の契約移民
沖縄とペルーへの移民
5 おわりに
次へのステップ
コラム10:日本のペルー人[柳田利夫]第7章 満洲移民の生活世界――集団引揚げ、中国残留を中心に[蘭信三]
1 はじめに
2 帝国崩壊――引揚げか中国残留か
1945年8月9日以降の日々
敗戦から引揚げまでの難民期
集団引揚げか、中国残留か
3 満洲移民事業の展開
農村経済更生運動と満洲移民事業
満洲移民事業の概要
満洲移民事業に付与された特性
投影される満洲移民
モデルとしての分村移民・分郷移民
4 満洲での開拓生活
開拓地での生活
開拓生活の困難
近代家族の誕生、植民地での近代化
階級関係と民族関係
開拓生活の「成否」の分かれ目
植民地都市生活者との比較
5 集団引揚者の戦後、中国残留者の戦後
集団引揚者の戦後経験
中国残留者の戦後経験
6 おわりに
次へのステップ
第8 章 東南アジアへの移民――日本優位から対等な関係へ[早瀬晋三]
1 はじめに
2 出稼ぎ労働者・「からゆきさん」から経済進出へ
3 移民取り扱い会社を介する呼び寄せ渡航
4 定住者の増加と教育問題
5 評価されない戦争協力
6 日系人の引き続く過去
7 「実習生」・留学生の増加
8 おわりに――日本優位から対等な関係へ
次へのステップ
コラム11:南洋群島への移民[今泉裕美子]
第9章 在日ブラジル人/デカセギ移民――日系人への帰国支援事業の受給者に着目して[アンジェロ・イシ]
1 はじめに
2 在日ブラジル系移民の実態――統計データを手がかりに
3 在日ブラジル人小史
在外ブラジル人意識が強化した2010年代
質的に異なる二つのデモ
深まる日本社会とのコミットメント
多彩な文化活動とメディア生産
4 事例研究:日系人への「帰国支援事業」を受給者の視点から再考する
移民の「再入国許可」をめぐる論争と闘争
帰国支援受給者(帰国した日系人労働者)アンケートのデータ分析
・「なぜ、受給を決断したか」、「なぜ、日本に戻りたいか」の自由回答欄より
・データから読み取れる支援金事業の問題点
・帰国者への聞き取り調査からの知見
移民の戦略と移民政策の力学
5 おわりに――高齢化する第一世代、ビザを熱望する日系四世
次へのステップ
コラム12:ブラジルにおける「継承日本語」のこれから[拝野寿美子]第10章 在日コリアンの歴史的変遷と生存のための経済戦略[李洙任]
1 はじめに
2 在日コリアンの歴史
2.1 併合前から戦後までの流入過程
併合前の在日朝鮮人(1895~1909年)
土地調査事業期(1910~19年)
産米増殖時期(1920~30年)
中国大陸侵略期(1931~38年)
戦時体制・強制連行期(1939~45年)
2.2 地域別人口推移
3 定住から永住へ
3.1 日本国籍の喪失
3.2 日本での残留理由
4 歴史・地理・文化
4.1 在日韓国・朝鮮人の法的地位の変遷
4.2 特別永住者の多国籍化
4.3 居住地域
5 在日コリアンの経済活動
5.1 在日コリアンたちの起業家精神
5.2 事例紹介
エムケイタクシー創業者・青木定雄(兪奉植)――タクシー業界の風雲児
被差別者の反骨精神
規制緩和――既存システムへの疑問
6 おわりに
次へのステップ
コラム13:日本におけるインド人ディアスポラ[東聖子]終章 移民研究の現状と展望[飯野正子・浅香幸枝]
概要
A 北米・カナダを中心に
1 はじめに
2 研究動向
研究分野の広がりと多様化
トランスナショナルな視座からの学際研究
国際共同研究の増加
3 人の移動と国際関係――トランスナショナルな視座から
日米関係の波と日系人
「ララ救援物資」計画
トロント仏教会
日本に「送還」された日系人
4 おわりに
B 中南米を中心に
1 はじめに
2 研究動向
2008年まで
2008年以降
3 人の移動と国際関係――トランスナショナル・リレーションズ
共同研究の事例
①南北アメリカ研究会(2005~06年)
②多文化共生の諸相研究会(2006~09年)
③ソフトパワーと平和構築研究会(2009~12年)
④イメージの中の日本とラテンアメリカ研究会(2014年~現在)
文部科学省の大学世界展開力強化事業のプログラム
国際会議における日系人の国際連携
トランスナショナルな視点の現代社会における意義と重要性
4 おわりにあとがき[編集委員会一同]
索引
┣■【豪州】にある島々にも日本人は移住していたはず。ここまで書くのであれば、もっと隅々まで取り上げて欲しいと思ってしまいました。(^_^;)