白狸の考現家 +図書

40手前で「読書」に目覚めた遅口です。知が凝縮された「宝物」。気付くのが遅すぎました・・・

もっと知りたい曾我蕭白 生涯と作品

 

もっと知りたい曾我蕭白―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

もっと知りたい曾我蕭白―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

 

 

www.tokyo-bijutsu.co.jp

 

蕭白の生涯は謎が多く、近年まで「どこの生まれかわからない」とまで言われていました。傲岸な性格を物語るエピソードが流布していますが、本当はどんな人物だったのでしょうか。リアルさと荒唐無稽さ、皮肉とユーモアが入り交じった奇怪な作品をみればみるほど謎が深まります。本書では制作期間を三期に分けて、ある程度制作時期の特定できる作品を紹介するとともに、各章に「動物描写」「人物描写」「風景描写」の特集を設け、さまざまな角度から作品をたどりながら、蕭白の精神のありかを探ります。掲載作品73点のうち5点は近年発見された作品です。
蕭白は、京都の商家の生まれでありながら、17歳で天涯孤独の身となって各地をさすらい、京都に落ち着いたのは40代(晩年の10年弱)という厳しい境遇を生きた苦労人でした。本書では、ずば抜けた画才だけを武器に放浪した経歴と照らし合わせながら、蕭白作品を読み解きます。
蕭白は伝統・権威に寄りかからず、虎の威を借る人間を嫌悪し、自分の考えや美意識を作品の中で強く主張しました。そしてそんな蕭白の個性や自立の精神を支持するが人々が、18世紀の京都にはいました。本書では、何の権威の後ろ盾もない無頼の画家を受け入れた文化的背景にも目を向けます。

 

目 次
【はじめに】 蕭白、没後約200年にしてようやく京都の市民権を得る
【第1章】 生い立ちと動物描写-17歳、画才だけを頼りに旅立つ
[コラム]蕭白をめぐる人々1: 明治期に蕭白研究に情熱を注ぐ-桃沢如水
[コラム]蕭白はここが違う1: 老人の正体は-久米仙人とほう居士
[コラム]蕭白はここが違う2: 寒山拾得-禅宗の画題を逸脱した表現
[コラム]蕭白畸人伝1: 第一次伊勢遊歴時代-制作は昼寝の合間-
[コラム]蕭白はここが違う3: 林和靖図-屏風のバランスまで壊す!
[コラム]蕭白はここが違う4: 富士・三保松原図-粗放さと繊細さの二重構造
[コラム]蕭白畸人伝2: 自身のルーツをどこに求めたのか-なぜ三浦氏を名乗ったか:
[コラム]蕭白をめぐる人々2: 蕭白の弟子がいた-播州高砂遊歴
[コラム]蕭白畸人伝3: 蕭白と蛇足の関係-ただの大法螺吹きとも言いきれない
   ●特集 蕭白の動物描写-襲い襲われるものの姿
[コラム]蕭白畸人伝4: 無頼と優しさと-世間の荒波に立ち向かう姿勢
【第2章】 群仙図屏風と人物描写-日本美術史上の鬼っ子画の誕生
[コラム]蕭白はここが違う5: 蕭白の赤-我々の神経を直撃する色彩の魔術
[コラム]蕭白はここが違う6: 竹林七賢図-賢人の愚人ぶりを描いた蕭白
[コラム]蕭白はここが違う7: 酔いによって冴える筆墨-現代では得られない豊かさ
[コラム]蕭白畸人伝5: 第二次伊勢遊歴時代-虹の絵画誕生秘話
[コラム]蕭白畸人伝6: 我こそは民の太祖の子孫-〈鷹図〉款記の謎
   ●特集 蕭白の人物描写-聖俗の交錯するおかしさ
[コラム]蕭白をめぐる人々3: 京にやって来た釈迦法中の無頼僧-金龍道人
   ●特集 同時代の画家たち-若冲、芦雪、奇想の競演
【第3章】 京都定着以降と風景描写-名声を得るも孤独からは逃れられず
[コラム]蕭白畸人伝7: 『平安人物志』-これで京の名士の仲間入り
   ●特集 蕭白の風景描写-孤独の旅で培われた感性
[コラム]蕭白はここが違う8: 虎渓三笑-三傑よりも風景を重視
[コラム]蕭白畸人伝8: 蕭白は狂人か-使僧なんぞに呼び捨てにされてたまるか
【総論】 十八世紀、蕭白を受け入れた美しい時代
曾我蕭白の作品を所蔵する主な施設
参考文献

 

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